リフト用スリングシートの歴史を紹介する前に、リフトの歴史を紹介します。
マンツィーニ・フランチェスコ氏の「Prevention of Low Back Pain in Health Care Workers in the 18th Century」という本の記載によりますと、患者リフトは18世紀から使用されました。当時、病気や障害者の寝巻の着替えを行う修道士達は腰痛を防ぐために開発しました。
19世紀の初めに、カール・エマー博士はオーストリアでベッドサイドでリフトを使用し、著作の中で紹介しました。当時のリフトはお年寄りの移乗ではなく、主に患者を吊り上げる為に使用されており、ロープとローラーで構成され、手動で上下する仕様となっておりました。吊具もシート式ではなく、ベルトのような仕様でした。ベッドサイドリフトは第二次世界大戦時の患者の持ち上げ及び移乗でも活用されていました。
1936年9月に16歳の学生アスリートであったテッド・ホイヤー氏は友人の試合を応援しに行く途中、交通事故にあいました。その日から、テッド氏は脊髄損傷で四肢麻痺になってしまいました。彼は、生活を続けていくために、1949年に彼のいとこのビクター・ヒルデマン氏と共同で初の電動モバイルリフトを開発しました。テッド氏はそれをベッドと車いすの移乗や、車いすと車の移乗で利用し、より便利な生活を送ることができました。この機械は当時の新聞にも紹介されました。
1950年3月に、テッド氏は初の介護リフトをジョン・アレン・アダムス氏に販売しました。翌年の9月に会社を設立し、1953年に工場が完成しました。電動介護リフトが正式に製品として製造され、病院だけではなく、障がい者等の移乗でも利用されるようになりました。
リフトの発展とともに、スリングシートも変わりつつありました。シート型のスリングシートは1823年にマーガレット・ディー・ ホケット氏より発明されました。
1954年、イギリスのエンジニアであるジョンペイン氏は初の壁式ホイストリフトを開発しました。当時、彼はヘディントンヒル病院でリッチーラッセル博士と一緒に働いており、第二次世界大戦退役軍人の持ち上げと移乗で苦労していた看護師達を助ける為に使用していた既存のベッド式リフトを改良しました。
1955年に、初の「オックスフォード」モバイルリフトは、製品として一般市場に向けて販売されました。資料及び写真から見ると、当時のスリングシートは、セパレート式スリングが広く利用されているのがわかります。その後、プール用リフト、浴槽用リフト等様々な移乗リフトが開発され、前述の介護リフトと一緒に欧米で少しずつ普及してきました。
参考・引用資料
- Carl Emmert, (1850), Krankenheber nach Leidig, beschrieben, Lehrbuch der Chirurgie, P.161.
- Margaret D. Hokett, (1823) Patient Lift Sheet.
- Manzini, Francesco, (1976) A Pioneering Patient Lift, Prevention of Low Back Pain in Health Care Workers in the 18th Century.
- Robin P, (2021) The Man Behind the Hoyer Lift, [https://medmartonline.com/blog/the-man-behind-the-hoyer-lift].(最終検索日 : 2021/11/19)
- Joerns Oxford, The History Behind Oxford Hoist, [https://doczz.net/doc/546742/the-history-behind-oxford-hoist-over-60-years-of-dedication].(最終検索日 : 2021/11/19)